(株) ミネック訪問
栗林公園の裏山、紫雲山に連なる峰山で養蜂を営む峰山ハチミツに取材に行ってきました。
お話を聞かせてくださったのは株式会社ミネックの社長である天野洋平さん。
もともと株式会社ミネックは浄化槽の設備管理を主にする会社で、洋平さんの代になってから新事業として養蜂業を始められたそうです。
洋平さんとミツバチの出会いは以前勤めていた会社。そこでの出会いから、会社を継ぐために香川県に戻って来られて養蜂を始められることになるわけですが、「すぐに養蜂を始めようと考えたわけではありませんでした。」「いつか養蜂ができたらいいなくらいで、最初はペットとしてミツバチを飼ってみようという気軽なものでした。」
それが今年の7月で、養蜂を始められてから丸7年。
養蜂を始められるにあたって、「養蜂業界では個人事業主として養蜂を営んでおられる方がほとんどのため、明確な養蜂技術の継承方法がなく、独学で養蜂について学びました。」
また、「ミツバチが色々な場所から花の蜜を集めてくるため、他の養蜂家さんがいるところからある程度距離が離れている必要がある。」など養蜂ならではの注意事項があるのだとか。また、「養蜂をやってみたいという人は多くいるものの、考えていた以上に大変で途中でやめてしまう方が多いのが実情です。」洋平さんも最初、養蜂をしている知り合いの方から、「養蜂は難しいぞ。」「毎年決まった量が採れるわけじゃないから、ストックは持っておいたほうがいいよ。」とアドバイスされたそうです。幸い「いまのところ極端な量の変化はなくきています。」ただ「自然のものなので全く採れないこともあるのかもしれないなとは思っています。」
ここで、そもそもミツバチがどんな生活をしているのかをお聞きしました。ミツバチが花の蜜を集めて、いわゆるハチミツを作っていることは知っていても、その生態については全くといって知りませんでした。
ミツバチのグループを構成するのは「1匹の女王蜂と数パーセントのオスバチ、90%以上が働きバチです。」ちなみに働き蜂はすべてメスで、オスは採蜜を行わないそう。では何をしているかというと、交尾のみしています。
女王蜂は最初から女王蜂として生まれてくるのかと思いきや、巣の中にある王台と呼ばれる場所に産み付けられた幼虫が、ロイヤルゼリーを食べ続ける(他の蜂も生まれてから3日目までは食べるもののそれ以降は花糖と花粉に変わる)ことで女王蜂になるのだとか。
次に1年間のサイクルとして「2月ごろは5000匹くらいですが、5月のゴールデンウィークの後には5万匹くらいで約10倍に増えます。短期間で増えるので時期によってハチミツの採れる量が違ってきます。」
「若い蜂は巣の中の作業だけで採蜜には行かないんです。生後2週間くらいたってからハチミツを採りに行くようになります。」
生後2週間。そもそもミツバチの寿命はどれくらいなのかをお聞きすると、「採蜜を行う働き蜂は40日くらいです。」つまり1シーズン中にも働き蜂は世代交代が行われていることになる。なので「ハチミツは実はすごく貴重なものなんですよ。」と洋平さん。
ミツバチの大敵はスズメバチ、特にひときわ大きいその名もオオスズメバチ。そしてダニ。スズメバチは人にとっても正直出会いたくない蜂ですが、ミツバチにとってはまさしく生命にかかわる存在。そのため、「春先のうちにできるだけスズメバチの女王蜂を駆除します。」それでも当然完璧ではなく、秋にもスズメバチを駆除する必要があるそうです。
そして、もう一つ厄介な存在なのがミツバチの卵に寄生し、卵の養分を餌とするダニ。採蜜を行わない時期に2種類くらいの薬を交互に使用して駆除をするそう。交互にする理由は薬に対する耐性ができてしまうため。ただ、完全に駆除できる薬が今のところなく、毎年多くのミツバチが命を落としているそうです。
昔はダニはそこまでいなかったが、増えてきているという話もあるそうで、原因はよくわかっていないようです。「薬の開発は今後の養蜂にとっては一つの大きな課題」だとおっしゃっていました。
養蜂用の面布で頭を覆って、巣箱に燻煙機で煙をかけている天野さん(煙をかけることでミツバチを落ち着かせる)。ミツバチは髪の毛に絡むと、パニックになり脱出できず刺すまで暴れるとのこと。
自分で世話をすることで、そこからいろいろと学ぶことが多いそうで、一例として、「蜂は黒色に反応して攻撃を仕掛けてくるといわれていますが、黒色のものを身につけているからといってすぐに攻撃をしかけてくるわけではなく、怒らせてしまったときに初めて、黒色に目がけて攻撃をしかけてくることに気が付きました。」
刺されることはないのかお聞きしたところ、「刺されるときは10発くらい刺されます。」
今回の取材中にも1回刺されておられましたが、平然とされていたので大丈夫なのかお聞きすると、「結構痛い」とのこと。ただ「痛いからと騒いでしまうと、ミツバチが余計に興奮してもっと刺される」のだそう。
では、どんな時に刺されるのか。
「ミツバチの機嫌が悪いと刺されやすいです。寒い日や風が強い日などは特に機嫌が悪く、逆に暖かい日には機嫌がよい」とのことでした。ちょうど取材の日も少し肌寒いときでした。
かわいらしい小瓶のパッケージ。「最後まで使い切ってほしいので小瓶にしています」そして「食べ終わったあとにもインテリアとして使ってもらえるようなデザイン」になっています。
次に峰山ハチミツの特長についてお話しを伺いました。
すっきりした甘さと香りの良さが特長で、峰山ハチミツのハチミツはすべて百花蜜。
「時期によってヤマザクラ、ニセアカシア、ミカン、ハゼの花、モチノキ、アカメガシワ、百日紅などの花の蜜が混ざっています。」しかし峰山ハチミツでは「花の種類ではなく、ハチミツが採れた季節や時期を明記するようにしています。」これは「採れた時期によって風味が違う」からだそうです。実際、購入されるお客様の中には採蜜された時期を指定して購入される方もいらっしゃるのだとか。(在庫がある限りは提供できる。)
「ハチミツというのは養蜂家が作っているわけではなくミツバチが作っています。そのお手伝いをしているのが養蜂家」なので「天然のものでコントロールすることは難しい。」
なので「味わってみて好きだな、と感じたものを選んでくれたら。」そして、「毎年の違いを楽しんでいただけたら。」と洋平さん。
次におすすめの食べ方もお聞きしました。
「難しい質問ですね。」と前置きしつつ「ベストはハチミツバタートースト。これは絶対なんですよ。」と少し力を込めて答えてくださいました。
ほかにも「ドレッシングに使っていただくのもおすすめです。玉ねぎとにんじんをすり下ろしたものと、醤油と酢とオリーブオイルを入れて混ぜ合わせて完成です。」「サラダにかけると野菜の風味から始まって、後味にハチミツの花の香りがほのかな余韻として広がる。」のでドレッシングとして相性がいいのだとか。そういう意味で「ソースにいれても面白い。」とも。
保管に関しては「冷蔵庫に入れると結晶化してしまうため、机の上(常温)に置いておいたほうがいいです。また、容器からすくい取る際にはキレイな乾いたスプーンですくってください。水がつくと糖度が下がり発酵してしまうことがあるので。」とアドバイスをいただきました。
緑に囲まれた自然を感じることのできる場所に直売所を構える。取材中にはホトトギスをはじめ野鳥のさえずりが聞こえていた。
最後に「峰山という自然の中にある環境を活かした、現在養蜂とは別に行っている探検隊という子どもたち向けのイベントも含めて、観光農園のような形で訪れる人に楽しんでいただけるような展開をしていければと」今後の展望も語ってくれました。
ミツバチに刺されることもある中での養蜂についてお聞きしたとき、「憎たらしいです、手間もかかりますし。でも世話をした分、返してくれるので。子どもと一緒ですね。」と少しはにかんだように語ってくださったのが印象に残っています。
新商品の構想もあるそうなので、今後の展開が楽しみです。